辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~ 2
 初めての経験らしく、イレネは唇を突き出していた。夢中になっていて、自分が唇を尖らせているのも気づいていない様子だ。
 ハンドミキサーは開発済みだけれど、今回はあえて手でやってもらう。
「……こんな道具もあるのね」
 珍しそうに、リティカはボウルをつついた。
 あいかわらず表情は動かないけれど、少しだけ好奇心をそそられているみたいだ。
 きっと、リティカは心優しい令嬢なのだろう。
 だって、大切にしていた婚約者を失った直後、他の人とのお見合いをしなければならなくなったら、馴染む努力を放棄してもしかたないと思う。
 だけど、リティカは、ラースとの対話を最初から拒むことはなかったし。今だって、もし将来辺境伯家に嫁ぐのなら必要だからと厨房にまで入っている。
「リティカ嬢もやってみる?」
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