辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~


 「……なぜお前がここにいるんだ、ヒルド…………」

 「………………ヒルド……」


 「なんだい、皆幽霊でも見たかのような目で見ないでおくれ。年に1回のお祭りなんだから私が来ていても不思議ではないだろう?」


 私はヒルドと呼ばれているお方の話を聞いて、頭が混乱していた。公爵様がお祭りに来るのは当たり前の事なのかしら?


 「ヒルド…………お前は相変わらずだな……妻が混乱しているから、ふざけるのはその辺にしておいてくれ」

 「妻?ああ!ご挨拶が遅れて申し訳ありません。私はブルンヒルド・ベルジテックと申します。お見知りおきください……」


 「あ……私はロザリアと申します。よろしくお願いいたします」


 テオ様のご親友とあって、私は深々と頭を下げてご挨拶した。きっとこれからお付き合いする機会も増えるでしょうし、しっかりとご挨拶しなくては――


 すると突然ブルンヒルド様が私の手を取り、甲に口づけをするような素振りをしながら「テオドールの奥様がこんなに可愛らしい方だったなんてね~」と言って朗らかに笑ったので、驚いて固まってしまう――

 
 テオ様と正反対のお方にどう対応したらいいのか分からないまま、私は立ち尽くしていた。

 
 
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