辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~
「ヒルド様、よく分かります。ステファニー様は強さと美しさと儚さを全て持ち合わせた、プリンセスのような方ですよね!知り合ったばかりの私の事もとても気にかけてくださって……」
「そうなんだよ~~君もそう思うんだね!嬉しいな…………あの時、そんな彼女が襲われていて、何としても助けたくて間に合ったんだけど、彼女の心の傷は深くて…………私ですら拒否してしまうほどに。その時は混乱していたのだと思う、その事自体はいいんだ。」
「何がヒルド様をそんなに苦しめているのですか?」
「…………あの時のステファニーの泣きそうな顔が頭から離れないんだ。手を振り払った事で傷ついたのは、きっと彼女の方だと思うから」
「そうですね……好きな人を拒みたい人はいませんもの。でも恐怖から拒否してしまう自分がいる。それはとても辛い事です……」
「…………………………」
愛する人にはいつでも笑っていてほしい。私ならそう思ってしまうから、自分が触れる事で辛い顔をさせてしまうなら触れられなくなってしまうかもしれない――
「ヒルド様はお優しい方です。きっとステファニー様もそんなところがお好きなのだと思います……だからこそ、ヒルド様が悩んでいる姿がステファニー様だってお嫌なのですわ」
「だから自分から離れる事にしたって事?」
私は返事の変わりに笑顔で頷く。
「ヒルド様、今度はヒルド様が気持ちを伝える番だと思います。ステファニー様はいつもヒルド様に寄り添っていたと思うのです。大切な事は言葉にしないと、きちんと伝わらないものなのですわ……手遅れになる前に伝えてみてください」