辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~

舞踏会に到着


 エントランスに下りる階段の下には、テオ様が正装をして立っていた。なんて素敵なの…………このお方が私の旦那様だなんて――


 いつもは無造作な髪の時が多いテオ様だけど、今日はサイドをまとめて前髪も綺麗に流している。フロックコートのカフは大きく、金糸や銀糸などの様々な絹糸を使われた織り柄が施されていて、黒の布地にいっそう映えているわ。

 ゴールドのウエストコートにも同様の織り柄が施されていて、ブリーチズもテオ様の鍛え上げられた脚のシルエットを美しく見せていた。


 いつもは鎧を着ている事が多くて、あまり貴族の服装を着ている姿を見る機会がない。もちろん一緒に夜会に行くのも初めてなので、正装姿を見るのが初めてなのは無理もないのだけど…………こんな姿を見たら、世の女性が放っておかないわね。舞踏会に行かせたくないというテオ様の気持ちが分かった気がする。


 私でもこんな独占欲があったなんて、自分の気持ちに驚きを隠せない。


 そして私のゴールドと赤の組み合わせのドレスと、自身の服装の色味を合わせてくれたんだなと思うと、夫婦なんだと実感して胸が温かくなった。
 


 「テオ様………………」


 
 エリーナに手を引かれて階段を下りて行くと、テオ様が気付いてこちらを見上げた。目を細めてこちらを見つめている…………大丈夫かしら…………ちゃんと満足していただけたかしら――――

 舞踏会に出席するよりも緊張するかもしれない。旦那様に喜んでもらいたい――

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