辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~

 国の中枢から遠い辺境とあって、1つの国のような造りなのね…………それだけ力があるという事がヒシヒシと伝わってくるわ。ベルンシュタット辺境伯は長きに渡って続いていたリンデンバーグとの争いを終わらせ、勝利に導いた英雄ですものね。


 そんな方の妻になるべく敗戦国からやってきた、みすぼらしい第5王女…………辺境伯にとって何のメリットがあるのだろう。

 しかも私は14歳、いくら12歳になれば法的に結婚出来るとは言ってもまだ14歳の私にあの辺境伯が女性として見るとは思えない……白い結婚になるのは目に見えているわ。

 それに辺境伯には想い人がいると…………お兄様が余計な情報を伝えてきた。


 私は愛される事はない、と言いたいのね…………元から愛される気なんてないから、わざわざ伝えてこなくていいのに。最後まで私が不幸になると言いたいのね………………心配しなくても幸せな人生は諦めているから。


 あの国の王女として生まれた時点で…………そんな事を鬱々と考えていると、突然馬車が止まる。


 「?」

 
 「……着いたのでしょうか?」

 
 エリーナが不思議そうな顔をしている。私が馬車の窓から外を覗こうとした瞬間、扉がバンッと開いた――――そして甲冑を付けた大きな手が入ってきて「……ロザリア姫、手を」という声が聞こえる。
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