辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~


 そこの扉を開くと、テーブルが幾つか用意されていて、室内も大きめだった。壁には豪華なソファも置いてあり、かなりの人数が寛げそうな部屋だわ。


 でも今は私しかいないけど……舞踏会は始まったばかりだし、こんなにすぐに休憩する人なんていないわよね。自分で考えて笑ってしまう。


 そこに給仕係の男性がやってきて、お茶を入れてくれると言われたのでお願いする。こんなに直ぐに給仕係が来て、もてなしてくれるなんてさすが王宮ね……ステファニー様はまだ来ないようだし喉が渇いていたので、給仕係の男性が入れてくれたお茶を先に飲んで待つ事にした。


 凄くフルーティな香りと味わいで、とても美味しい……さすがに王宮で入れてくれるお茶は茶葉から違うのかもしれないと感動し、給仕係の男性に声をかけた。


 「これは何ていう茶葉を使っているの?とても美味しくて香りも素晴らしいわ……」

 「はい、こちらは”ルーピン”という茶葉で、香りが強く安眠作用をもたらしてくれるのです。」

 「安眠……リラックス出来る効果があるのね。産地は?」

 「はい、こちらの産地は、奥様の母国リンデンバーグになります」

 「?!」


 私は驚き、思わず立ち上がってしまった。私の母国の茶葉?この給仕係の男性は何を言って……リンデンバーグは敗戦国として、どこの国との取引も制限されているはず。私は王族としての扱いを受けてこなかったから、こんな茶葉があるだなんて知らなかったけど……王宮で使う物として仕入れるわけがない事くらい分かる。
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