辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~
そんなテオドールを見ていると、とても羨ましく思えた。そんな風に大切に想えて、全力で守りたいと思える人に出会える事は幸せな事だから――
私にもいるはずなのに……私は完全に機会を逃してしまったのね。私の王子様は未だに私に触れてくれない。
テオドールが珍しく姫の事で悩んでいるから、悩みを聞きに行ったら、ヒルドを見ているみたいで胸が痛かった。彼らには私のようになってほしくない…………お姫様も本当に可愛らしい女性だった。
私もこのくらい可愛らしい女だったら、ヒルドも今頃触れてくれたかしら――
バルーンアート祭りで夜にスカイランタンを飛ばすイベントで、ヒルドへの気持ちにけじめをつけようと、他の方との結婚を願った。
もう王子様を待っている年齢でもないし。さようなら、私の初恋。
でもその後、なぜかヒルドが頻繁に通ってきて、お茶をする事になるんだけど…………庭園を散歩する時に一生懸命手を繋いでくる。どうしたんだろう……
「ヒルド大丈夫?無理しなくていいのよ?」
「無理なんかじゃないよ。ステファニーは大丈夫?私に触られて嫌じゃないかい?」
「……私は嫌だった事なんてないわ。昔、あなたの手を払ったのだって、自分が汚れている気がしてあなたを汚したくなかったから……ヒルドのせいじゃないの」