辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~
ホールの扉から廊下に出ると、不自然なほど誰もいない。辺りはシーン……と静まり返っている。
案内係は?警護にあたっていた騎士は?いくら王宮とは言え必ず安全とは限らないのに誰もいないなんて――
嫌な予感がしてサロンの入口を見ると、僅かに開いていたので、そっと中を覗く――――ロザリアを布でぐるぐる巻きにしている男がいる事に気付く。
友達の窮地にすぐさまサロンに入った――
「そこのあなた、その女性は私の友達なの。置いていってくださらない?」
私は出来る限り相手を刺激しないように…………尚且つ少しでも時間を稼ぐように話した。早くヒルドかテオドールが来て…………
「…………それは出来ない頼みですね。私がここにいる事は目を瞑ってもらいたいところですが…………そうもいかないようですね」
「当たり前でしょ?友達の窮地を見過ごす人間がいると思って?その子を置きなさい!」
私が大きな声を出したと同時に男がロザリアを抱えながら走ってきて、突進してきたっ――
私は護身術を習っていたので、何とかかわしたのだけど……ドレスが重くてバランスを崩す――逃すものか――――咄嗟に男の足にしがみつき、時間を稼ぐ。男は私を引きずった状態で扉から出て行こうとする。