辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~
「?!う、嘘よ…………だってお母様は身分が低いと……周りの人間も皆言っていたわ………………」
「それはあなたにお母上の出自がバレないようにする為の嘘でしょう。ベラトリクス様もずっと監視されていたでしょうし、あなたに伝える事が出来なかったのでしょうね……陛下とは年が8歳ほど離れていましたが、陛下はベラトリクス様をとても可愛がっておられて…………ベラトリクス様が19歳の時に王宮騎士を護衛に連れて遠乗りをしに行った事があって……その時に襲われ、攫われてしまってから生き別れてしまったのです……」
…………レナルドの言う事が未だに信じられずにいた。確かにお母様は娘の目から見ても美しくて、儚い人だった。リンデンバーグの何もかもを嫌っていらして…………
「陛下はありとあらゆる手を使って探しましたが見つからず…………見つけた時にはベラトリクス様はリンデンバーグでご病気になっていて、もう先が長くない状態だったのです」
「…………お母様は私が10歳の時に亡くなられたわ。私たち親子は私が7歳くらいまで、城の北の塔から出る事は許されなかったし、何か行事がある時以外はほとんど幽閉状態だったから…………私はなぜこんなに外に出てはいけないのか分からなかった。もしかしてその事があって、お父様は外に出さないようにしていたの?」
「おそらく…………陛下も何年も探し回りましたが、手掛かりが全くつかめませんでした。ようやくベラトリクス様を見つけた陛下は、リンデンバーグに返すように働きかけたのです。しかしリンデンバーグからは、あなた様を置いていく事が条件だと言ってきた。陛下もベラトリクス様もそれは拒否しました…………そして交渉は決裂し、戦へと発展していったのです」
レナルドの言っている事をなかなか受け入れる事が出来ずにいた…………お母様は私を嫌っていたはずよ。それなのに私を置いていくのを嫌がったって…………頭が追い付かない。
そしてボルアネアとリンデンバーグの戦いの発端が、私とお母様の事だったなんて――
「戦いが始まって、お母様は目に見えてやつれていったわ…………陛下も私たち親子がいたから、大々的に攻め入る事が出来なかったのね……お母様は自分の為に民が犠牲になっている事に耐えられなかった、のかしら……」