辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~
本棚に入れたままだった日記
自室に幽閉されて手持ち無沙汰だった私は、ほとんど物のない自室を見渡してみた。
本当に何もない…………好きで読んでいた本が本棚に並べられているくらいで、質素な木の机とベッド、少しの洋服くらいで年ごろの女性らしい物など何もなかった。
でもベルンシュタットに嫁ぐまではこれが私の日常で当たり前だったのよね……嫁いでからはベルンシュタット辺境伯夫人として、何不自由ない暮らしを送らせてもらっていたから、自分がどれほどテオ様に甘やかされて……愛を与えてもらっていたかを実感する――――
ベルンシュタットでの生活が恋しい。豊かな生活がしたいんじゃない。エリーナやベルンシュタットの皆、ステファニー様やヒルド様、テオ様が…………本当に良くしてくださったから。皆に会いたい。
連れ去られた事は不本意だったけど、レナルドも来てくれて、それに――――きっとテオ様が来てくださると信じているから。
落ち込んでいる場合ではないわね。
本棚にふと目線を上げると、懐かしい本の中にお母様が残した日記があった。この日記はお母様が亡くなった時に遺品として私がこっそり自室に隠し持っていた物で、10歳の私には勇気が出なくて読む事が出来ないでいた物だ。
ベルンシュタットに嫁ぐ時もここでの全てを捨てて嫁ぐ気持ちだったから、持って行かなかった。
でもレナルドからお母様の話を聞いて……テオ様に沢山の愛をもらったから、これを読む勇気が湧いてきたのでページをめくってみる事にした。両手は縛られたままだけど、手先は動く…………なんとか一枚一枚開いていく。