辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~



 
 ――――ここに連れ去られて2年経ち、私は自分を連れ去った男の子供を身籠った。その子は無事に生まれ、名前はロザリアと名付ける。

 妊娠している最中も何とか脱出の機会を伺ったけど、激しい動きをするとお腹の子供が危険だと思うと足が止まってしまって……妊娠中は諦めた。出産した今も赤ちゃんを連れての脱出は現実的ではないわね……今は断念するしかない。この子を置いていくなんて出来ないから。早く国に帰りたい……私から全てを奪ったあの男が憎い。でもロザリアはそんな事は関係ないとばかりに笑っているわ。
 この子の為にもう少し生きていられる。まだ生にしがみついていられる……誰か私を見つけて。この子にも故郷の土を踏ませてあげたい――――


 ――――ロザリアは2歳になった。様々な事を覚えていく子供の成長は素晴らしいわね。まだ祖国からの迎えは来ない。

 でも無理もないかもしれない……ずっと塔の中しか動く事が出来ないし、自分の居場所を知らせる手立てがないもの。私たちを幽閉するくせにずっと放置し続けているあの男もどういうつもりなのだろう。私が王女でなければこんな事にはならなかったのかしら……でも放っておいてくれるのはありがたい事だわ。関わりたくもないし。
 私はただロザリアが大人の事情に巻き込まれないようにしてあげたい。
 彼女には人生を自分で選べるように――――
 

 ――――私たちのいる塔に王妃殿下や側妃たちがやってきた。そしてロザリアを連れて行ってしまった。あの子に何かあったら生きている意味などない。早く返して――――

 
 ――――2日経って戻ってきたロザリアはすっかり怯えてしまっていた……王妃殿下や側妃たちに何をされたの…………でもまだ言えるような年齢じゃないから伝えられるわけないのよね。私ではなくロザリアに手を出すなんて、私はどうすれば。お兄様助けて――――

 
 
 ここからページは破かれていて亡くなる寸前に飛んでいる。
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