辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~


 ――――もう生きる事など諦めていたのに……なぜ今になって祖国からの密偵がやってくるの――――

 

 ――――リンデンバーグとボルアネアが戦になった。私を見つけたお兄様が交渉してくれたのに、あの男……国王は散々交渉を長引かせた。戦の機会を窺っていたんだわ……強欲な男。私は渡すけどロザリアは置いて行けと言い始めるし、最初から私の事も政治の駒として使おうとしていたのね。そんな国にロザリアを残していったらどんな目に合わされるか分からない。きっとボルアネアとの交渉に使われるだけだわ。体のいい人質よ…………悔しい――――

 
 ――――体が思うように動かない。息も苦しいし、私はもう長くはないかもしれない。ロザリアだけでもボルアネアに渡せたらいいのに……でもそうなったらあの男が激怒して大きな戦が起こる。私はあの男と血縁関係はないけどロザリアは娘だから、返せと迫ってくるでしょうね……愛情なんて持ち合わせていないくせに。
 戦と言っても殺し合うのは王族ではない、民よ。ここの王族にはそんな事どうでもいいんだわ……どうしてこんな悲しい事になってしまったの。
 
 祖国があまりにも遠くて……――――

 
 
 日記がそこで終わっていた。



 私はお母様の日記を嫁ぐ時に持って行かなかった事を激しく後悔した。持って行ってあげれば良かった…………きっと帰りたかったわよね。


 知らず知らずのうちに涙が溢れてきた。私がお母様の足枷になっていた事、そしてきちんと大事にされていた事……私は日記を抱きしめて声を殺して泣いた。そのまま泣き疲れていつの間にか眠ってしまっていた――――

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