辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~
~・~・~・~
眠りから目覚めてふと窓の外を見ると、日は傾き、夕方になっていた。
ここに運ばれてきたのは朝方だったはずだから、お母様の日記を読んで眠ってしまったのね…………日記は絶対ボルアネアに持って行きたい。どうにかして持って帰れないかを考えて、ドレスのウェスト部分の中に潜ませてみた。
あまり厚さのある日記ではなかったので、そこまで膨らみは……ない、と思う。ちょっとお腹が苦しくなるだけで、すっぽりと中に収まっているので、このまま持って帰れたら――
そんな事をしていると、突然扉が開かれて兵が入ってくる。私の腕を引き「国王陛下がお待ちだ」と連れて行かれた。
多分玉座の間にいるのでしょうね……ボルアネアに制圧されて、民が苦しい生活を強いられていても自身の王座にしがみついているのだなというのは、容易に想像出来る。
ボルアネアに制圧されたリンデンバーグは、他国からも国交を断絶されたりしていて、国は貧困にあえいでいると聞いていた。お父様やその他の王族たちが質素に暮らしているとは思えないし、この国に住む民は苦しい思いをしているのでしょう……かつては城にもある程度の兵はいたのに今は、ちらほらと配置されているのみ。
こんな状態なら、他国からすぐに攻められてしまうわ。ボルアネアが制圧したから、他国が勝手に手を出せないのもあって辛うじて存続出来ているだけなのに……彼らは自分達が置かれている立場を全く理解していないんだわ。
私を攫ってどうするつもりなのかしら…………またお母様の時のように閉じ込めて、テオ様やボルアネアとの交渉に使うつもりだとしても、もうそんな事をしたところで国を再建出来るとは思えない。
そんな事を理解出来る精神状態でもないのかもしれない――