辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~
「衛兵!この女を地下牢にでも入れておけ。ボルアネアには通達しておいたから、じきに向こうから交渉の為の連絡が来るだろう。あちらにはお前が我が国に戻って来たいと言うから手を貸したと言ってある」
「な、にを…………」
私が自らここに来たと?
ううん、そんな事を誰も信じるわけないわ。それにレナルドがどこかに潜んでいるはずよ。きっと私の事をテオ様や陛下に知らせてくれているはず…………絶対に信じて待つのよ。
私はどうしてお母様が私の事を空気のように扱っていたのか、その理由が聞きたかったのだ。それも先ほど王妃殿下がご丁寧に教えてくれた……――――私がいるから生きられると書いていたお母様、いつも遠くを見ていたお母様。
私は悔しくて、悔しくて、お母様の魂と一緒にボルアネアに帰るまで、こんなところで朽ちるわけにはいかないと心に誓った。
かつての私は生きる事に全く執着していなかったのに……いつ死んでも良かった。でも今はこんなにも死にたくないと思っている。それもこれも全てテオ様やベルンシュタットの皆のおかげだわ。
絶対にあのお方に会わずに朽ちたくない。お母様、私に力を――
「さあ、行くぞ」