辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~
地下牢を脱出
私を連れて来た兵は私を地下牢に入れた後、すぐに戻って行った。地下牢ではいかにも雇われ牢番のような男が、地下牢の入口に立っている。地下牢にはその牢番と私以外誰もいない。
改めて状況を整理してみようと思うけど、さすがにここから抜け出す方法はなさそうね……大人しく事態が動くのを待つしかないのかしら――
ここに来るまでに何も口にしていないから、そろそろ喉が渇いてきたわ。
空腹は気にならないけど、喉の渇きは辛いものなのね……この牢番に水を用意してもらえないか聞いてみよう。
「あの…………誰かいませんか……」
「………………何か言ったか?」
「あの、何か飲み物をいただければ嬉しいんですけど……」
機嫌を損なうのは得策ではないと判断して、出来る限り丁寧に話した。すると牢番は腰に装着していた布の水袋を取り出し、差し出す。
どうしたらいいのかしら……これに口をつけるのは憚られるわね…………私は両手を合わせて牢の中の私の手の平に水を注いでくれるように頼んだ。
牢番は意外と親切で、手の平に水を注いでくれたので、一日ぶりに飲み物を飲んで生き返ったような気分だった。
「……ありがとう、とても助かったわ。あなたは雇われてここにいるの?」