辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~

 「…………そうだ。この国にはもう働く場所はない。王族はこんな状態でも贅を尽くしているが、俺たち平民は働くところもなければ満足に生活をする事も出来ない。何か仕事があれば何でもするさ……」


 私にこんな話をするのは嫌でしょうね。この人がどのくらい事情を知っているか分からないけど、民に罪はない。こんな生活を強いてしまって、王族として生まれた者として罪悪感が募る――



 「こんな王族のところで働くなんて反吐が出るけどな……家族もいる。金もないから他所に行ったところで生活出来ないのは同じだ……」

 「…………ごめんなさい」

 「あんたが謝る事じゃない。この国はもう終わったも同然だ……国の行く末を見るもの悪くないと思っている」

 「…………………………」


 お母様はリンデンバーグに嫌な思いしかないのかもしれない、でも私は、気のいい人々が住んでいる事も知っている。この国を王族から解放して、皆で治められる国を作れたらいいのに――――


 
 「……奥様!」

 「誰だ?!」


 突然扉が開いたと思うと、レナルドが地下牢に入って来たので、驚いた牢番は大きな声を出した。でも地下へ向かう階段にいた兵たちはやって来ない……シーンとしているわ。

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