辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~

 「レナルド!どうしてここが分かったの?」

 「奥様の動きは常に注視していましたので、ここに入った事も知っています。地下階段の兵たちには気絶してもらっています」

 「……………………あんた、この姫さんの仲間か?」

 「……ああ、そうだ」


 牢番は腕を組んで何か考えていた。そして意を決したように自身が持っていた鍵を使って私の牢屋の扉を開け、私を中から引っ張り出した。

 
 「このお姫さんを連れて行きな。大事な人なんだろ?」

 「…………まぁ大事と言えば大事ですけど……あなたはいいんですか?」

 「人を捕まえる仕事なんて、碌なもんじゃないしな。適当な事を言って、この城を出るよ」

 
 この人にも生活があるのに私を見逃してくれるのね。こんな仕事、本当はやりたくないって言っていたし……私は自分のドレスの装飾に使われている宝石類や手首の宝飾品を取り、この牢番に渡す。


 「…………見逃してくれてありがとう。こんなものしか渡す事が出来ないけど、お礼だと思って受け取ってほしいの。家族と共に他国に移ってもいいし、生活の足しにしてくれてもいいし……」

 「あ、いや……こんなの受け取れねぇよ…………」

 「いいの、受け取ってほしい。お水も飲ませてもらったし、助けられてばかりだから……あなたの名前は?」

 「…………ヴィーゴだ。お姫さん、あんた、幸せになんなよ」
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