辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~
この長い争いによって多くの民が亡くなった。あの時の丘で亡くなった兵も……我が国の敗戦によって、もう血が流れる事はないと思いたい。
私の身、1つで解決するなら安いものね。
そんな事を考えながら門を通り抜けると、綺麗に整列した兵達がテオドール様の帰りを出迎える。皆ピシッと敬礼しているわ…………凄い統制が取れているのね。
その奥には執事と思われる中年の男性が待っていた。
「ミルワース、帰った」
「旦那様、お帰りなさいませ…………そのお方がリンデンバーグの?」
「…………ああ、そうだ………………ロザリア、執事のミルワースだ。」
「あ…………初めまして、わたくし…………」
私が言い終わらないうちにテオドール様が歩き始めてしまう。
「応接間を使う。しばらく二人にしてくれ」
「承知いたしました」
ミルワースは恭しく頭を下げている……テオドール様は有無を言わさずズンズン歩いていくので、私の頭は追い付いて行かなかった。挨拶も出来なかったし、お城の方々もこんな状況で混乱するわよね…………何より私の心臓がもたない。