辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~
「大丈夫です、城の裏側から地下通路で国境を越えられる秘密の通路があります。大昔に造られた非常用のものですが、ここの王族はすっかり忘れているようですので、我々が使っても誰にも見つからずに国境を越えられるでしょう」
「…………レナルドは何故知っているの?」
「この城の造りは戦の時に調査済だったのです。本来なら攻め滅ぼそうとすればいつでも出来たのですが……」
私たち親子の為にそうしなかったのね…………私は自分のお腹に入れたままのお母様の日記をさすった。きっとお母様が守ってくれるわ――
「ではその通路から国境を越えて、国境沿いを伝ってベルンシュタットを目指しましょう」
レナルドは無言で頷いてくれた。レナルドの後ろを付いて行き、雑草に隠されている地下通路の入口を見つける。こんなところに入口があったなんて……草が張り付いて、扉にからみついている。ここまで無造作に放置されていたのなら、長い間使われていなかったってすぐに分かるわね。
中はどんな感じになっているのだろう…………ちょっと怖い気がするけど、レナルドを信じて入る事を決意した。