辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~

待ち人来たる



 地下通路の入口はとても錆びていて、色んな雑草が絡みつき、開けるのが大変だった。長い間使われていなかった事がよく分かるわ…………お父様やお兄様方が城の守りなんて気にしてはいなかったものね。


 自分の城が落とされるとは夢にも思っていない人たちだったから……今の状況は本人たちが一番焦っているのではないかしら。


 気付いた時にはもう手遅れのところまできているのに、私を連れて来たという事はまだ何とかなると思っているのよね。


 「足元にお気を付けください……かなり古い通路ですので、あちこち朽ちていますから」

 「……分かったわ」


 本当にレナルドの言う通りで、地下通路は土を掘ったところに木で少し通路を支えているだけって感じで……大雨や災害が起きたら生き埋めになってしまうのでは、というような造りだった。


 ここに長い時間滞在するのは良くないわね。速やかに移動して地上に出なくては――


 「ここの通路は基本的に一本道です。しかし国境を越えなければならないので、少し距離を歩く事になります。奥様の足は大丈夫ですか?」


 私はドレスの時に履いていた少しヒールのある靴だったので、長時間歩く事は難しいかもしれない。でも……


 「大丈夫よ。もし痛くなったら脱いで、布でも巻きつけて歩くわ。幸い布なら沢山あるし。生きて帰る事が一番大事だから……」

 「…………奥様は逞しくなられましたね」
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