辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~


 この状況に混乱しきっていると、気付けば応接間と言っていた部屋に二人で入っていて、私はソファにそっと下ろされた。

 そして私の膝元に跪くような形でテオドール様がこちらを見上げている。私の手を握り、優しい笑顔を向けてゆっくり話し始めた。


 「突然このような出迎えで申し訳ない。あなたが来るのをずっと待っていたものだから…………」

 「私を?」


 「2年前、デボンの森で出会った時の事は覚えているかい?」


 もちろん覚えている…………あの時は怖かったし、逆光で顔はよく見えていなかったけど、あの時助けてくれたテオドール様の事を一日たりとも忘れた事はないわ……そう思い出して、私は頭を縦にブンブン振って頷いた。

 
 テオドール様はニッコリ笑ってお話を続ける。


 「良かった…………さっき初めましてと言っていたから、覚えていないのかと……」

 「あ、あれは咄嗟に出ただけで……動揺していたのです…………ごめんなさい」

 「謝る事はないよ。私の事はテオドールと呼んでほしい。ロザリア」
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