辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~
自国だけではなく、隣国もその先の海も……世界はまだまだ未知なモノに溢れているという事を感じられるから、私はこの丘がとても好き。
国境付近とは言え、自国だから兵がそこかしこにいて、私に声を掛けてくる。
「姫様!このようなところに来て大丈夫なのですか?」
エリーナと同じ事を言うのね……クスリと笑ってしまった。
「大丈夫よ、戦時下とは言えここは最も守りが固い場所の一つですもの。そう簡単には破られないでしょう」
「よくぞ言ってくださいました!我々の日々の努力が報われるってものです」
兵士は気分を良くして胸を張った。
「姫様ー!関所の皆さんがお昼をご馳走様してくれるみたいです!一緒に食べましょう~!」
エリーナったらご飯の話になると生き生きとするんだから。でもありがたいお話ね。兵達とは、こっそり抜け出した時に世間話をした事がある人もいるし、お城でも顔を合わせる人もいるから、皆私が王女だと分かっている。
私はお言葉に甘えてお昼を頂こうとした……その時、私の頬を何かが掠めていく――
頬からは一筋の血が流れ、私はゆっくりと後ろを振り返ると……先ほど話していた兵の胸に矢が刺さり、倒れていた。