辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~
そう言ってエリーナはバタバタと走って行った。思いつきで料理長の手を煩わせるのは心苦しいけど、テオドール様に喜んでほしいから頑張りたい。エリーナが急いで戻ってきて、厨房を使わせてもらえるとの事で、私たちは厨房に移動した。
「こんにちは、料理長のグリンゴール。今日はよろしくお願いいたします」
「奥様、私めの名前を憶えてくださっているとは!こちらこそよろしくお願い致しますね~」
グリンゴールはとても恰幅の良い髭を蓄えた中年の男性で、料理も大好きだし食べる事も大好きだと言っていたわ。私とエリーナは動きやすい服装にエプロンを付けて、髪を全て結い上げて頭巾をかぶり、料理に入る態勢を整えた。するとグリンゴールがテキパキと材料を用意し、パン作りが開始される。
「まずはこの粉と塩と……そこにあるオイルと水を使いましょうね。こうやって粉っぽさがなくなるまで混ぜて……」
「この粉と、お塩と……オイルは…………このくらい?」
「もう少し!」
「もう少しね…………お水と…………このまま混ぜて…………」