辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~


 テオドール様がとても嬉しそうに笑ってくださるから、パンを作って良かった…………こういう仕草1つ1つに救われてホッとする。テオドール様は嫌がらないから……自分がここにいる事を赦されている感じがして、嬉しい気持ちでいっぱいになる。


 「上手に出来ているかは分かりませんが……食べてもらえたら嬉しいです」


 私の感謝の気持ちが少しでも伝わってほしいな……そう思って笑っていると、テオドール様が私を例のごとく抱き上げて「パンが焼けたら私たちの部屋に運んでくれ」と言って、厨房を後にする事になった。



 「テ、テオドール様?」

 「…………どうしてパンを焼こうと思ったの?」


 「…………テオドール様に日頃の感謝の気持ちを表したくて……パンがお好きだと言ってらっしゃったから、沢山作ってあげたら喜ぶかなと……ダメ、でしたか?」

 「…………………………」


 テオドール様が片手で顔を覆っている…………ダメだったのかしら……なんだか困らせてしまっているみたい。

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