辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~
「そこで止まるんだ。リンデンバーグの者だな?」
少女はゆっくりとこちらを振り返る…………大きな瞳が零れ落ちそうなくらい見開き、シルバーアッシュの髪は腰までの長さでウェーブしていた。どう見ても貴族の令嬢と言った風だ。
すぐそこに我が国の兵士が来ている……見られたら捕まえなければならないな。ただでさえ使者を殺された事で我が国の者たちは気が立っている。
「リンデンバーグの者かと聞いている……」
「……え、ええ、そうです」
「名は?」
「………………………………」
やはり貴族の令嬢か……名乗れば身分がバレてしまうのを警戒しているな。せっかく少女が身分を隠していたのに一緒にいる女性が全てを台無しにする叫び声を上げた。
「姫様!お逃げください!!」
「エリーナ!」
………………マズい…………大きな声を出されたら我が国の兵に見つかる……私は剣を抜き、声を出さないように命令するつもりだった。しかし私の行動に対して、少女は大人の女性の腕を引き、その女性を守るように両手を広げているではないか――――
私は寸でのところで剣を止めた。