辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~

レナルドという男と妻への煩悩 ~テオドールSide~



 ――――コンコン――――



 「失礼いたします」


 私に呼ばれたレナルドは、言われた通りきちんと私の執務室にやってきた。この男の何が怪しく感じるのか分からない…………でも違和感を感じずにはいられない。

 それを確かめる為に呼んだのだが……私に呼び出されたのにも関わらず、動揺するどころか妙に落ち着いている。


 「今日はご苦労だったな。ロザリアが随分喜んでいた…………菜園に種を撒き始めるのはいつぐらいから始める予定だ?」

 「はい、そうですね……だいたい10日以上は日を置いた方がよろしいので、それからでしょうか。奥様はすぐに種を撒いてしまいたい様子でしたけど」


 そう言ってロザリアの様子を思い出し、笑っている…………


 「ロザリアは純粋なんだ。あまり疑う事をしない……彼女の育った環境が影響しているのだろう」

 「そうですね…………」


 私は確信した。この者は”異物”だ。


 私は自身の剣を抜こうとする姿勢でレナルドと名乗る男の前へ出た――――


 「お前は何者だ?」


 私が最大限に殺気を放って剣をチラつかせ、脅しているのに全く慌てた素振りを見せずに笑っている。ここまで威圧すれば、たいていの者は慌てふためき、腰を抜かすか、逃げようとする……ただの庭師ではないのは確かだが……
 

 「………………何の事です?何を仰っているのか……」

 「ロザリアの生い立ちは、彼女と二人の時しか話した事はない。なぜお前は知っているかのような口調をした?」

 「………………………………」
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