辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~
しばらく睨み合った後、私は最速で剣を抜き、目の前の男の首元に剣をピタリと付ける――――しかし男は驚く素振りもなく、恐れ慄いている素振りすらもない。
「恐ろしいな~~辺境伯様は。私はしがない庭師ですよ…………奥様に菜園のお手伝いをしてあげたいのです。まさか解雇したりはなさらないですよね?」
「………………………………」
「そんな怖いお顔をなさらなくても……奥様との菜園作りの約束を果たしたら、ここから去りますから…………」
何か怪しいものを感じつつも、この者をすぐに解雇にしたらロザリアが悲しむだろう…………今すぐにどうこうしようとする意志はない、か…………
「………………いいだろう。ロザリアの為に励んでくれ」
「仰せのままに…………では、失礼いたします」
――――パタン――――――
――冥王と呼ばれる辺境伯も新妻には弱い、か――――面白くなったきた――――――不敵な笑みをしながらレナルドは執務室を後にした――
~・~・~・~
その日はロザリアとゆっくり夕食をとり、湯に入って寝室に入ると、ロザリアはベッドに横になって眠ってしまっていた。
今日はなかなかの重労働だったから、疲れて寝落ちてしまったんだな……寝落ちた姿がまた可愛らしい。
クスっと笑ってロザリアを布団の中に入れて寝かせた――――彼女と結婚誓約式をしてからずっと同じベッドで手を繋いで寝ているけど、私の中でロザリアは聖域だと思っているところがあって、手を出そうとはあまり思わなかった。