辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~

 私はエリーナを立ち上がらせて、一緒にこの場を去ろうとした。私を敵国の王女と知りながら、見逃してくれるこの方にとても興味が沸いた私は、いなくなる前に名前を聞いておこうと声をかけた。


 「あの…………あなた様の名を聞いても?」

 「……………………テオドールだ……もうすぐ我が軍が来る。早く行くんだ」


 私はそう言って見逃してくれる背中にペコリと頭を下げ、エリーナと命からがら森を抜けて城下町まで逃げる事が出来た。

 城下町はボルアネア国の奇襲で混乱していたけど、私を探しに来ていた王宮騎士に見つかり、王城に連れ戻されたのだった――――


 その日、ボルアネア国は我が国の国境付近を制圧し、私が身を潜めたデボンの森まで制圧する。この戦争ももうすぐ終わりが近いかもしれない……あの赤髪の騎士様はテオドールと仰っていたけど、爵位などは教えてはくださらなかったわ…………


 森での出会いから約2年後、国力を消耗し、徐々にボルアネア国に制圧された我が国リンデンバーグは敗戦する。

 
 その時の陣頭指揮を執っていたのが、テオドール・ベルンシュタット辺境伯だと敗戦後に知った。


 あの時の騎士様が――――感慨にふける間もなく、私はボルアネア国への貢ぎ物として、ベルンシュタット辺境伯に嫁ぐ事に決まったのだった。

 
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