辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~
私がそう言うと、テオドール様が「ありがとう」と少し苦し気な表情で言ってくださった。
そしてテオドール様は、自身の事を沢山お話してくれた…………ご両親の事、幼い頃に婚約させられたけど色々と面倒だからそのままにしていた事、婚約者には想い人がいて婚約の必要がなくなった事、私との出会いを元婚約者が喜んでくれて、今も応援してくれている事…………
「…………テオドール様はまだ、ステファニー様の事を想っていらっしゃるのですね?」
「………………え?…………いや、どうして?」
「ステファニー様に想い人がいるから婚約解消したのであって、本来ならまだ婚約していたかったのでは…………」
「いや、いやいやいやそうではない。私にも想い人がいるのだから…………」
やっぱりテオドール様にも想い人がいるのね…………勘違いするところだったわ。
「では、その想い人と幸せになってください」
精一杯の笑顔でそう告げる――――
「…………分かった、じゃあそうさせてもらうよ……」
ああ、これでお別れなんだ…………そう思ったら涙が滲んできて顔を下に向けた。するとテオドール様の両手が私の顔を挟み、上を向かせたと思ったら、そのままキスをされてしまったのだった。