辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~


 
 私は一瞬何が起こったのか分からず、瞬きもせずに目を見開いて固まってしまう…………


 少しの間触れただけの唇は、名残惜しさを残しながらゆっくりと離れていった。


 「………………な、なぜ…………」

 「…………私の想い人は君だ。私を幸せに出来るのもロザリア………………君しかいないんだよ」


 私が放心していると、テオドール様が自身の額を私の額にコツンと触れ合わせてきて、ゆっくり話始める。


 「…………色々と誤解をさせてすまない。でも私の気持ちだけは誤解しないでほしいんだ。君をあの森で見つけた日から、私の気持ちは君にしか向いていない…………今もずっと、これからも。私の幸せを想うなら、ロザリア……………………私の元からいなくならないでほしい……」


 苦しい表情は変わらなかったけど、テオドール様の目は熱を帯びていて、愛おしい者を見る目を向けてらっしゃる――――これは自分に都合のいい夢ではないだろうか――


 そう思ってテオドール様の手に頬を擦り寄せてみても、しっかりと感触があるわ。これは夢じゃないのね――



 「…………嬉しい。私もテオドール様が大好きで…………どうしても一緒にいたいのです」


 泣き笑いのような顔をしてしまったけど、私がそう言うとテオドール様は今までで一番の笑顔をくださった。

 私の幸せはテオドール様の幸せだから、この笑顔を見られただけで、もう一生分の幸せをもらったような気持ちになっていた。
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