辺境伯様と白い結婚~敵国の王女のはずが旦那様の甘やかしが止まりません~
「?はい、そう呼んでほしいと言われまして……あ、いけませんでしたか?」
私が慌ててそう聞き返すと「いや、驚いただけだよ」と言ってテオ様はニッコリ笑ってくれた。良かった、何か間違ってしまったのかと思って――
「じゃあこの後、レナルドのところに行って種蒔きをしてきます!」
「……………………うん、行っておいで……」
「?」
テオ様のお顔が笑っているのだけど、笑っていないような…………でも私と目が合うと、いつものような優しい笑顔を向けてくれて、相変わらず美しくて優しい笑顔に見惚れてしまう。
きっとテオ様は沢山の女性の心を掴んでいたに違いないわね。もうすぐ16歳になるし、社交界デビューをしたらそういった女性たちが寄ってくるところを見なければならないと思うと…………私に耐えられるかしら――――
私は、そんな邪念を振り払うかのように庭仕事に向かった。
何故かテオ様も一緒に――――
「…………どうして旦那様がご一緒にいらっしゃるのです?」
レナルドが素朴な疑問を投げかけると「私が来たら何か不都合でも?妻が心配で一緒に来ただけだが?」とテオ様が返し、何やら不穏な空気なのですが…………