嘘を吐く貴方にさよならを
 朝花は腕を組み背もたれに寄りかかり、何かを考えるように天井を仰ぎ見た。

「んーー、そうねぇ。ごめんなさい、私からは言えないわ。本人が隠しているのなら、その気持ちを尊重したいの」

 考えた結果、答えられないと決めた朝花は首を横に振る。
 彼女の返答にやっぱりかと、二人は苦笑を浮かべ、肩を落とした。

「まぁ、そうですよねぇ」

「個性の花は、人のプライベートでもあるからね。仕方がないわ」

 眉を下げ、ごめんなさいねと目を伏せた。
 彼女のしおらしい姿にこれ以上何も聞けず、二人は顔を見合せ肩を落とした。

「それにしても、あの子が告白ねぇ。想像すらしていなかったわ」

「そこまでですか?」

「えぇ。あの子は神経質でね。あまり他人とは関わりたくないよ。だから、人を好きになることも今まで無かった。だから、ちょっと寂しいけれど、逆に嬉しいわ」

 赤く頬を染め、本当に嬉しそうに朝花は笑みを浮かべた。
 彼女の様子が可愛く、二人もつられて笑みを浮かべ笑いあう。

「やっぱり、本人に聞かないと駄目だよね。気になるなら」

「気になるのは真理でしょ? 私は特に…………」

「でも、少しは気になるでしょ?」

「まぁ…………」

 二人の会話を見て、朝花は体をパソコンに向けキーボードに手を添えた。

「他には特にないようね、私は仕事に戻るわ。貴方達も気を付けて帰りなさい。糸桐さんは部活でしょ? アップの時間が無くなるわよ」

 職員室の時計を反射的に確認すると、真理は顔面蒼白。
 風のような速さで駆けだした。

「一華! 私は部活行くね! またね!!」

 早口で言うと、一瞬のうちに消える。
 朝花が「廊下を走らない!」と言うが届いておらず、走っているような足音が廊下に響いていた。

「まったく、もう」

 文句を漏らしつつ作業を始める朝花に、一華はお礼を言って職員室を後にした。
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