嘘を吐く貴方にさよならを
 今は部活の時間なため廊下を歩く一華の耳には、外からの人の声や、教室内からの楽し気な会話が届く。

 誰もいない廊下を人の声を楽しみながら進んでいると、前の方から女子の笑い声が聞こえてきた。
 その声に一華は肩をびくっと動かし、顔を俯かせる。

 前に進む足が徐々にゆっくりとなるが、近づいて来る女子の笑い声は大きくなるばかり。

 相手がこっちに来ているとわかった一華は、顔を青くしその場に立ち止まってしまった。

「それでさー。あ」

「っ……」

 前から来た一人の派手な女子生徒が、廊下に立ち止まっている一華に気づく。
 何かを企むような笑みを浮かべ、意気揚々と彼女へと近づいて行った。

「こんな所で何をしているのかしら、ねぇ? 赤薔薇さん?」

 一人が言うと、取り巻き二人がクスクスと笑う。
 居心地悪く、一華は足早に去ろうと女子生徒の隣を潜り抜けた。だが、腕を掴み止めてしまう。

「ちょっと、感じ悪くない? 私達と一緒に居たくないわけぇ?」

「いえ、そういう訳では…………」

「そう? それならいいけど――ねっ!!」

「グッ!!」

 腕を掴み、彼女の腹部を殴る。
 笑い声が響く中、一華はその場に蹲り咳き込んだ。
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