制服レモネード

「えっと……人参、玉ねぎ、豚肉、よし」

あれから2日が経った放課後。

今日の夕飯担当は私なので、学校の帰りにスーパーに寄って買い物をしてから家へと向かっていると、

「おつかい?」

後ろから透き通る低い声が聞こえて、思わずバッと振り返った。

っ?!

「へっ、あ、や、矢吹さんっ」

目の前の人物に自分の目を疑う。

ネイビーカラーのスーツが今日もよく似合っている。

外でご近所さんにこうしてばったり会うのなんて初めてだし、ましてや声までかけれるなんて。

しかもよりによって、相手はあの矢吹さん。
急に緊張しだして、彼の顔がよく見れない。

「荷物、貸して」

「へっ、」

ここ数日、頭の中で矢吹さんのことを好き勝手に言っていた分、話すのが気まずいと思っていると、彼の声とともに荷物を持っていた手が軽くなった。

「あっ、あの、そんな、大丈夫です。これくらいしょっちゅう持ってます」

慌てて、矢吹さんの手にある買い物袋に手を伸ばす。

「しょっちゅう持ってるならなおさら。この間、恥ずかしいところ見せちゃったから、お詫び。こんなんで詫びとか全然なってないけど」

声のトーンがあまりにも落ち着いていて、こうやってスマートに親切を示せるところとか、

また『慣れてるんだな』なんて思ってしまって、慌てて「じゃあ、お言葉に甘えて」と声を出した。

この間のこと、正直、矢吹さんは謝ったのはうわべだけで、本当はなんとも思ってないと思ってたから、わざわざ声をかけてきて、こんなことをしてくれるとは、少し意外。
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