制服レモネード

「あ、ごめんね。けど、俺でも見てられなかったから、梓葉はもっとびっくりするだろうと思って」

「あ、いえ、はい……」

さっきまで、人の視界をその手で隠していたくせに、何でそんな平然と話せるんだ矢吹さん。

「や、矢吹さんは、その、過去にお付き合いされてた方とこういうところ来たことあるんですか?」

矢吹さんに質問したいことといえば、そういうことしか思いつかない自分は、ほんと可愛げがない。

もっと、矢吹さんの好きな食べ物とか、好きな本とか、映画とか、そういう話ができればいいのに。

いちいち過去の女性関係がちらついてしまう。

「あ〜高校のとき付き合ってた子と1回行ったかな。あ、でもたしか、2人きりじゃなくてダブルデートだったと思う。ん〜、だけどあんまり記憶がない」

「そうなんですか……」

高校生の矢吹さんは、もう当然ながら彼女がいて、ダブルデートなんてしてたのか。そうか。

自分で聞いときながら、少し寂しい気がするなんて、バカだなぁ。

「だから、女の子と2人きりで遊園地っていうのは、梓葉が初めてだ」

「……っ、え」

わかってる、矢吹さんにとってさほど意味はない。

でも、ずっと『子供』扱いされていると思っていたのが、突然『女の子』になって、にやけそうになる。
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