制服レモネード
「雨で冷えちゃったからね」
そう言いながら、この家に来て初めて目にする白のマグカップを矢吹さんが私の前に置いてくれた。
「これって……」
マグカップの中を覗くと、レモン色の飲み物が湯気を立て注がれていた。
「うん、ホットレモネード」
そういう彼の手には、私が今日あげたばかりのマグカップがあった。
「ふふ、やっぱり矢吹さんに似合います。そのカップ」
「ありがと。今日からこれでコーヒーも飲むよ」
矢吹さんが、これからコーヒーを飲むたんびに、私の選んだマグカップを使う。
想像しただけでにやけそうになる口を慌てて隠すように、ホットレモネードの入ったカップに口をつける。
ふわっとレモンの香りが鼻を抜けて、口の中は暖かい甘酸っぱさでいっぱいになる。
身体全部をレモネードの暖かさが包み込んで、身体が相当冷えていたことを実感する。
「はぁ〜、落ち着くなぁ」
そう言いながら、矢吹さんが私のすぐ隣に腰を下ろす。
あぁ、なんでだろう。
いつものドキドキとはまた違う。
自分の格好がいつもと違って制服じゃないから?
ソフトクリームで間接キスをしちゃったから?
遊園地で、カップルのキスシーンみたから?
今日の思い出が、頭いっぱいに浮かび上がってたちまち顔が火照る。