制服レモネード
矢吹さんは私から少し顔を離すと、私の両肩にそれぞれ腕を預けながらそう聞いた。

「なっ……」

完全に、キスされちゃうのかと思ってしまった。
わからない。からかわれているのか、それとも──。

私の聞き間違いではないのなら、矢吹さんはさっき、私に「付き合って欲しい」って言った。

「こういう意味で付き合おうって言ってる。梓葉。俺と付き合ってくれるの?」

こういう意味って、やっぱり、キスということ?

ありえないと思っていたことが起こってしまった。

私が学生であるうちは、私と矢吹さんの年の差がどうにか埋まらないなら、この気持ちはずっと、矢吹さんには届かないんだと思っていた。

なのに──。

「ほ、本当、ですか?ほ、本当に本当に本当に、私と付き合ってくれるんですか?」

「こんな恥ずかしいこと、嘘で言うわけでないでしょ」

矢吹さんはそういうと、軽く目をそらす。
チラッと見えた耳の先が赤い気がして。

本当に、矢吹さんとお付き合いができるの?

「でも、矢吹さん、私のこと子供だって……」

今日の遊園地、ジェットコースターの列でもそう言われたのを確かに覚えている。

「うん。そう自分になんども言い聞かせて、そう思い込んで、必死に、梓葉よりも大人でいるのが正解だと思ってた」


矢吹さんはそう言いながら、優しく私の頬を包み込んで撫でる。
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