制服レモネード
「私も……これから見るもの全部、矢吹さんと一緒がいいですっ」

寂しさでどうにかなっちゃいそうだった心が、一気に温まって、安心で、嬉しさで、涙が頬を伝う。

「よかった、これで振られたらどうしようかと……」

矢吹さんはホッとしたように息を吐く。
なにを言ってるんだ、振るわけがないじゃないか。

初めて私が恋をした人、今もずっとこんなに好きな人なんだから。

まだ、夢なんじゃないかって思ってるよ。

「私の初恋なんですよ!矢吹さんは。振るわけないじゃないですか」

「ありがとう。こんなダメ男好きになるなんてなぁ、もったいないって一瞬よぎるけど、それよりも、誰にも取られたくないって気持ちが一番でかい」

矢吹さんはそう言いながら、両手で私の頬を包みこむ。

『誰にも取られたくない』なんて。
嬉しくてまた泣きそうだ。

「……キス、してもいい?」

っ?!

矢吹さんのセリフに、ボワっと顔が熱を持つ。

まさか、こんな日が来るなんて。
予想してなかった事態に心臓の音はどんどん速く、大きくなって。

私は、ゆっくりと頷く。

頷いたのと同時に、恥ずかしさのあまり若干目線したにしたまま目を瞑って。

こんな状況で、絶対、矢吹さんの顔なんて見られない。

どんな顔をしているのか、気になるところもあるけれど、もう頭も心もいっぱいで爆発寸前だ。

再びフワッと大人のにおいが香って。

私の唇にゆっくりと、柔らかくて温かいものが触れた。

少しして静かに唇が離れる。

唇が離れても全然鳴り止まない心臓の音。

大好きな人と、キスしたんだ。
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