制服レモネード
「梓葉の言った通り」

ゆっくり目を開けると、彼の大きな手が私の頬を包んで微笑みながらそう言った。

「……私の言った通り?」

「本当だ。一途に大切に一人を想って、そんな相手とすることだから素敵なことだ。この歳になってこんなことに気付くなんてな」

「矢吹さん……」

今、矢吹さんにすごいことを言われているのに、いろんなことが一気に起こりすぎて、うまく言葉が出てこない。

矢吹さんも私と同じ温度で思ってくれているって、そう思ってもいいってこと?

「自分でも今すげーびっくりしてる。こんなにドキドキするんだって」

「え、いや、矢吹さんがそんな……」

「嘘だと思う?」

矢吹さんの問いかけに、コクンと頷く。

「じゃあ、確かめてごらん」

矢吹さんはそういうと、私の左手首を掴まえてから、自分の胸に優しく押し当てた。

トクトクトクトクトク

矢吹さんの心臓の音。

「速い……」

「でしょう?恥ずかしながら、今までこんな風になったことない」

ありえない。あんなに綺麗な女の人たちと過ごしてきた矢吹さんだ。

私とキスしてドキドキするなんて。

信じられないと思ってしまうけど、今、実際に聞いた心臓の音は本物で。
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