制服レモネード
「あ、ねぇ、アズ」

1人脳内でニヤニヤと考えていると、突然さっきとは少し声のトーンが違う結衣に名前を呼ばれる。

結衣の方に目をつけると、窓の外の一点を見つめている。

「……あいつにもちゃんと言った方がいいんじゃない?」

そう言う結衣の目線の先には……校庭のベンチでスヤスヤと寝ている龍ヶ崎くん。

授業、始まるっていうのに……。

「うん、そうだね」

前に、デートに誘うとかなんとか言われたことがあるから、結衣も心配しているんだろう。

ただ単にからかってるだけだと思うけど、今度会ったら一応説明しておこう。

矢吹さんとお付き合いを始めて早1週間が経とうとしている金曜日の夜。

今日も私は矢吹さんの部屋のリビングで、レモネードを飲みながら学校の課題をやっている。

学校から帰ってきて家の用事を済ませてから、ママたちが帰ってくる夜9時まで、こうやって矢吹さんの部屋で過ごすのが日課になりつつある。

「ちょ、矢吹さん、書けないです」

「ん〜」

曖昧な返事をしながら、私を後ろから抱きしめたまま座って私の手に触れる矢吹さん。

もちろん、課題に集中なんてこれっぽっちもしていない。

ただイチャイチャするためだけに矢吹さんの部屋に行くの、なんだか罪悪感が芽生えてしまうのだ。

形だけでも、何か別のことをしていたい。

「はぁ〜〜疲れが取れる」

「っ……」

矢吹さんのため息が、ちょうど私の耳元にかかってくすぐったい。
< 120 / 227 >

この作品をシェア

pagetop