制服レモネード
矢吹さんの手を握る。

「梓葉」

「っ……」

彼に名前を呼ばれて顔を向けると、そのまま優しいキスが降ってくる。

「ちょ、矢吹さんっ」

「勉強なんてする気ないくせに。悪い子だね、梓葉」

「い、一応してますよ」

「一応、ね」

満足そうにニコッと笑った矢吹さんは、私の頭に手を置いてから私の身体から離れた。

クルッと後ろを振り返って、矢吹さんの様子を伺うと、ソファに座ってから目をつぶっていた。

相当疲れているらしい。
お仕事、きっと私が思ってるより大変で忙しいのかも。

「ごめん梓葉、ちょっと寝る」

「あ、私のことはお構いなく」

そう声をかけると、矢吹さんは目を瞑りながら優しく微笑んでソファで横になった。

「梓葉といると、落ち着くっていうか、全身の力抜けて……」

「わかりましたので、寝てください。課題終わったら声かけるので」

私がそういうと矢吹さんは「ん」とだけ返事をした。

忙しいなか、こうやって私との時間を取ってくれること、嬉しいと思う反面申し訳ない。

本当は、この間矢吹さんから借りた曲の感想を話したかったんだけど、こんな疲れてたら流石に矢吹さんも忘れちゃうよね。

私は、矢吹さんの寝顔を少しの間見つめてから、再び課題に取り掛かった。
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