制服レモネード
「これって……」

何かを水で薄めたような半透明色をした飲み物に、氷が何個か入っている。

「飲んで」

矢吹さんにそう促されて、私はグラスを手に持つ。

ひんやり冷たいグラスが、緊張で熱い体をほんの少し冷やしてくれる。

グラスを持ったまま目をキョロキョロさせると、カウンターの端に何本かお酒のボトルが置かれているのが見えた。

「あっ、これ、お、お酒?!」

「はっ……?」

「私、未成年なのでお酒は!」

「バカ」

やっぱり私に何かする気なんじゃないかって気持ちが溢れると、矢吹さんの暴言が飛んできた。

「何もしないっていったでしょ。いいから飲んで。お酒は1ミリも入ってないから」

「はあ……」

もう一度、グラスに入った液体を見つめて、今度は少し匂いを嗅いでみると、レモンのにおいが鼻に抜けた。

──ゴクン

っ?!

「っ、何これ美味しいっ!」

レモンの爽やかな酸味に、優しい甘さが口いっぱいに広がって弾ける。

今まで飲んだことない味だった。

「レモネード、知らない?」

「あ、聞いたことはありますけど。飲んだのは初めてです。何これ、すごく美味しいです!」

「そっか。よかった。これ自家製なんだ」

そう言って、矢吹さんはカウンターの上に、薄くスライスされたレモンとシロップの入った瓶を置いてみせた。

「えっ、矢吹さんが自分で?」

「あぁ。祖母がよく作ってて。この瓶は形見みたいなもん」

そう言って瓶を見つめる矢吹さんの顔が、今まで見たことないくらい、優しくて、その瞳には少し切なさまで感じて。

胸がキュンと音を立てた。

そんな顔、するんだ……。
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