制服レモネード
「あの、龍ヶ崎くん」

数メートル無言で歩きながら意を決して、彼を呼び止める。

「何。寄りたいとこでもある?」

「ううん。龍ヶ崎くんに話しておきたいことがあって」

私がそういうと龍ヶ崎くんは私の目をしっかりと捉えて「ん?」と声を出した。

「あのね、この間、私好きな人がいるって話してたじゃん。デート行くって」

「あぁ」

結衣に報告した時以上に緊張して、口が乾く。

「それで……今、その人とお付き合いしているの。だから……」

緊張で彼の顔が見れなくて、今龍ヶ崎くんがどんな顔をしているかわからない。

「だから、龍ヶ崎くんとはデートできない。ごめんなさい」

「……はぁ?」

目をギュッとつぶって謝ると、そんな声が聞こえた。

「あ、えっと、龍ヶ崎くん言ってたよね、今度私のことデートに誘うって」

あのセリフがどういう意味だったかわからないけれど、どうであれ私の矢吹さんへの気持ちはまっすぐだってことを知って欲しいから。中途半端な行動を避けるために。

「は、何。梓葉、あのこと本気にしてたの?」

「え……」

龍ヶ崎くんのセリフに思わず間抜けな声が出る。

「あんなの本気にすんなよ。あぶねーやつだな」

「あ、いや、本気にしてたっていうか、もし仮にそうであるなら期待させるようなことしたらダメだなって……」

やってしまった。

絶対自意識過剰って思われた。
いや、確実に自意識過剰だ。
今になって恥ずかしくなる。

だって、龍ヶ崎くんだっていつもと違う顔であんなこと言ったし……。
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