制服レモネード
「梓葉のことは好きだけど、別にそういう目で見てねーから。反応が面白いからからかっただけ」

「はっ、そっか……」

「だから変に距離取るとかすんなよ。別に何もしねーから」

龍ヶ崎くんは、私の頭をくしゃくしゃっと雑に撫でると「早く行くぞ、暗くなる前に」と言って私の少し前を歩きだした。

これでよかったんだ。

龍ヶ崎くんが私のことをなんとも思ってないとわかった今、何も気にせずにファッションショーにも集中できるんだし。

結衣が言ってたみたいに、用心深くてなんぼだよね。うん。間違ってないよね。





「はい。今日は特別にケーキもあるぞ〜」

いつものように夕飯を食べ終えて、ママたちが帰ってくるまでの時間を矢吹さんの部屋で過ごしていると、

矢吹さんがニコニコしながらレモネードを運んできたすぐ後に、美味しそうなシフォンケーキを運んできた。

「うわっ、美味しそう!いちごのシフォンケーキ!」

ふわふわの生地は、綺麗なピンク色をしていて、見ているだけでほっぺが落ちそうになる。

「どうしたんですか?これ」

「取引先の人に教えてもらったんだ。近くに美味しいケーキ屋さんがあるって聞いたから、梓葉と食べたいなぁと思って」

隣に腰を下ろした矢吹さんは私の頭を撫でながらそう言う。

矢吹さんが……私のことを思って?

ただでさえ仕事でクタクタなはずなのに。
最近はすごく忙しそうだし。
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