制服レモネード
「アズ、大丈夫?」
午後の授業になってもあからさまに落ち込んでいる私を見て、結衣が声をかけてくれる。
「ごめんね。結衣。初めてのことで気持ちがいっぱいいっぱいで……」
「何もアズが謝ることなんてないでしょ。疑われる行動してる矢吹が悪いんだし。でも、私はさ、信じてるよ。アズの好きになった人が、浮気なんてする人じゃないって」
結衣はそう言って私の手をギュッと握ってくれる。
「うん。ありがとう結衣。私も矢吹さんを信じたい。何か理由があったんじゃないかって」
そうだ。まだ矢吹さんの顔も見れていないんだ。
濱谷くんの見間違いだって可能性もあるんだもんね。
「あ」
結衣と移動教室から教室へと向かっていると、前から男の人の声がした。
「うげっ、なんてタイミング」
隣の結衣が正面をみてそういうので、私も俯いていた顔を同じように正面に向ける。
正面にドーンと立って私たちを見下ろす人物。
「龍ヶ崎くんっ」
「どうも。そんな下見て歩いてるとぶつかるぞ」
龍ヶ崎くんはそう言って私に軽くデコピンをした。
「う、気をつけます」
「ちょっと龍ヶ崎、あんた、アズに変な……」
「あ、結衣、大丈夫。そのことはちゃんと話したから」
慌てて結衣にそういうと、結衣は「あ、そうなの」と分かってくれてその後すぐに「でも心配」と付け加えた。
「あんたが心配してるようなことしねーから安心しろ。ただのモデル仲間だから」
龍ヶ崎くんは、『モデル仲間』なんてセリフを強調しながらいうと「またな」と私の肩に手を置いて行ってしまった。