制服レモネード
「モデル仲間って……めっちゃ調子付いてるなあいつ」
龍ヶ崎くんの背中を見つめてそういう結衣。
でも、いつも通りの龍ヶ崎くんにホッとした自分がいる。
龍ヶ崎くんが私に告白したわけでもないのに、私にあんなこと言われても変わらず優しい。
矢吹さんのことがあって、今弱ってる私には余計そう見えちゃうのかな。
「アズ?どうした?」
結衣が心配そうに私の顔を伺う。
「ううん。なんでもない」
慌てて笑顔を作るけど、結衣の表情はまだ不安そう。
そんな彼女の顔に気付かないふりをして、私は教室へと向かった。
*
「明後日の日曜日はついに本番。今日は実際に会場を見学して軽く確認を行います。そして明日は本番さながらのリハーサル。龍ヶ崎くん、梓葉ちゃん、よろしくね」
部長の鈴木先輩のそんな声が聞こえて顔を上げると、横に大きな建物があるのが見えた。
あぁ、そうだった。
今は服飾部のみんなと歩いて大学にやってきたんだ。色々と考え事をしてきたら、学校からここまでの道のりの記憶がない。我ながらちょっと怖いや。
「おい、梓葉大丈夫か?」
みんながぞろぞろと大学の門をくぐる中、隣を歩いていた龍ヶ崎くんが耳打ちでそう聞いてきた。
「えっ、なにが?」
「何がって、顔色、明らかにわりーよ」
「……そんなことないよ!あっ、見て龍ヶ崎くん、学園祭の準備、楽しそう!」
龍ヶ崎くんのセリフにギクッとなりながらも、慌てて話を晒してどうにか濁す。
こんなことで迷惑かけちゃダメだ。