制服レモネード

「モデル仲間って……めっちゃ調子付いてるなあいつ」

龍ヶ崎くんの背中を見つめてそういう結衣。

でも、いつも通りの龍ヶ崎くんにホッとした自分がいる。

龍ヶ崎くんが私に告白したわけでもないのに、私にあんなこと言われても変わらず優しい。

矢吹さんのことがあって、今弱ってる私には余計そう見えちゃうのかな。

「アズ?どうした?」

結衣が心配そうに私の顔を伺う。

「ううん。なんでもない」

慌てて笑顔を作るけど、結衣の表情はまだ不安そう。
そんな彼女の顔に気付かないふりをして、私は教室へと向かった。





「明後日の日曜日はついに本番。今日は実際に会場を見学して軽く確認を行います。そして明日は本番さながらのリハーサル。龍ヶ崎くん、梓葉ちゃん、よろしくね」

部長の鈴木先輩のそんな声が聞こえて顔を上げると、横に大きな建物があるのが見えた。

あぁ、そうだった。

今は服飾部のみんなと歩いて大学にやってきたんだ。色々と考え事をしてきたら、学校からここまでの道のりの記憶がない。我ながらちょっと怖いや。

「おい、梓葉大丈夫か?」

みんながぞろぞろと大学の門をくぐる中、隣を歩いていた龍ヶ崎くんが耳打ちでそう聞いてきた。

「えっ、なにが?」

「何がって、顔色、明らかにわりーよ」

「……そんなことないよ!あっ、見て龍ヶ崎くん、学園祭の準備、楽しそう!」

龍ヶ崎くんのセリフにギクッとなりながらも、慌てて話を晒してどうにか濁す。

こんなことで迷惑かけちゃダメだ。
< 137 / 227 >

この作品をシェア

pagetop