制服レモネード
なんとなく目に入って指差した先。

大学生の男女何人かが、看板の準備をしている。
その中には、明らかにカップルのように見える1組がいて。

もし、あの中にいるのが私と矢吹さんだったら……なんて想像してしまう。

喧嘩した後に矢吹さんの出張で1週間会えなくなったあの頃とは全然違う。

私と矢吹さんは今付き合っていて、そんな中、会えなくなってて、浮気の疑いまで出てきているんだから。

比べ物にならないくらい、あの時よりも不安が大きい。あの時だって、テストに全然集中できなかったんだけど。

「梓葉ちゃん、聞いてる?」

「はっ、な、なんでしょうか!」

突然名前を呼ばれて我に帰ると、鈴木先輩がこっちを見ていた。

「大丈夫?梓葉ちゃん、もしかして、緊張してきた?」

鈴木先輩の声に「そうかもしれないですっ」と引きつった顔を見せながら謝る。

ファッションショーに集中してないなんて、絶対ダメだよ。頭の中、矢吹さんのことばっかりなんて。





「よし、明日の日程はもう大丈夫ね!なんかあったらまたグループチャット動かすから。私たちはまだ作業が残ってるから学校に戻るね!」

「はい、ありがとうございました!よろしくお願いしますっ」

「じゃあ、また明日ねー!」

大学の見学がなんとか終わり、私たちは大学の門の前でそれぞれ別れる。

私たちはそのままうちへ、先輩たちは再び学校へ。

「梓葉、ちょっと」

最近、放課後の帰りはずっと龍ヶ崎くんに送ってもらっていたから、今回もいつもの流れで龍ヶ崎くんと2人帰り道を歩いていると、突然、グイッと手を掴まれた。

「ん?……どうしたの、龍ヶ崎くん」

「どうしたのって……こっちのセリフなんだけど」

「え……?」
< 138 / 227 >

この作品をシェア

pagetop