制服レモネード
矢吹さんのことで、こんなに何も手がつかなくなって、何をやっても心ここに在らずって感じのダメダメな私にもこうやってちゃんと優しいんだから。
「梓葉にそんな顔させるような男なら、辞めちゃえば」
「……」
言い返せない自分が悔しい。
矢吹さんのことで、こんな顔しているのは事実だから。
ヤキモチや嫉妬は、相手のことを信じていないから、なんて言う人がよくいるけれど。
理由はそれだけじゃない。
自分にも全然自信がないから尚更そうなんだ。
「違うの。私が子供なのがいけなくて。あっちも忙しいのは仕方のないことなのに……」
頭ではわかってるつもりで、でも、心はずっとモヤモヤしててスッキリしないのが今の気持ちで。
「仕方ないことじゃねーだろ。好きなやつにこんな顔させるくらい忙しいって問題だろ」
違う。違うんだ。龍ヶ崎くん。
私たちの忙しいと、大人の忙しいはきっとなにもかも違うんだよ。
「っ、でも、あっちにも、色々あるから……」
──ギュッ
え……。
ふわっと香水の香りが鼻をかすめて、私はその香りに身体全体を包まれた。
な……これっ、って……。
「理解してあげてるフリするくらいなら、もっと上手にやりなよ」
耳の後ろで、龍ヶ崎くんの声が聞こえて、いつもよりも何十倍も優しくて、そして少し悲しそうで。