制服レモネード
龍ヶ崎くんは、さらに私を抱きしめる力を強めた。

「全然意味ねーじゃん。くっそ我慢して引いてやったって言うのによ」

っ?!

「が、我慢?龍ヶ崎くん、何か我慢してるの?」

もしかして、やっぱりファッションショーに出るのが嫌とか……。

身体が離れて、2人の視線がぶつかる。

「……デート誘うって言ったの、今使ってもいい?」

「えっ、いや、龍ヶ崎くん、それ冗談だって……」

ベンチに置いていた手が、龍ヶ崎くんの手によって包まれる。

これって……。

「梓葉が笑ってるなら、今そいつといて幸せなら、俺に邪魔する権利なんてねーし、ずっと梓葉の友達でいるつもりだったよ、でも……」

龍ヶ崎くんの見たことない表情。

いつもつり上がっている眉毛が、まっすぐ平行になっていて、優しい瞳でこちらを見ている。

ふわっとまた香水の香りが広がって、彼の冷たい手が私の頬に触れる。

「梓葉のこと、好きなんだよ。俺。気付いたらいつも梓葉のこと探してるし、多分、自分が今思ってる以上に惚れてる。ずっと言わないつもりだったけど、今の男といてそんな顔するくらいなら、俺のところくればって思う」

「龍ヶ崎くん……」

私のために、嘘をついていた。
私のために、気持ちを隠していた。
その事実に、さらに頭がクラクラする。

そして、私のことを好きだなんていう。
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