制服レモネード

なんで、こんな私のことなんか……。
自分のことばっかりで、龍ヶ崎くんにこんなことまで言わせてしまって。

恋をしたら女の子は可愛くなるとか、あれ多分、嘘だ。

私ったら、どんどん嫌な自分になってる気しかしない。矢吹さんを信じられなくて、龍ヶ崎くんの気持ちに気付けなくて、気遣えなかった。

「……ごめんなさいっ、私、全然気付けなくて……なのに、」

きっとたくさん、龍ヶ崎くんの気持ちを乱すようなことを言ってしまった、してしまった。

「バーカ。気付かれたらカッコつかねぇだろ。俺の演技がうまかったってことにしとけよ。うまく隠せているつもりだったし」

龍ヶ崎くんはそう話した後に「よしっ!」と声を出してベンチから立ち上がった。

「梓葉、行くぞ」

「えっ、行くってどこに……」

なぜか得意顔でこちらを見ている龍ヶ崎くんに首を傾げる。

「言ったろ?デートだよ」

うっ、やっぱり冗談じゃないのか……。

付き合ってる人がいて、他の人デートなんて絶対ありえないし、しちゃいけないのに。

どこか、今はありがたいと思ってる自分がいる。

「それとも、時間、ない?」

初めて職員室で見た時の彼は何処へやら。
全く別人みたいに私のことを何度も気遣ってくれる。

今は、もう、考えたくない。
頭の中、ずっと悪い想像ばかりで嫌になるんだ。

「……ううん。行く」

私は小さくそう呟いて、ベンチから立ち上がって龍ヶ崎くんの元へと歩いた。
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